【スペシャル記事】by 坂西裕(M.マキノサイクルファクトリー)第3回「安全かつ効率の良いオーバーテイク」

茂原ツインサーキットはカーブが続くツイスティなレイアウト!安全走行のためセオリーを学びましょう。
ろんぐらいだぁすとーりーず!オフィシャルチームインストラクターの坂西裕さんによるスペシャル記事第3回は、「安全かつ効率の良いオーバーテイク」の解説です。
キャラエン会場となる茂原ツインサーキット(東コース)はカーブが続くテクニカルコース。まったり派もがんばる派もそれぞれが基本を押さえた走行をすることでコース上の安全が保たれます。
自転車だけでなく四輪車でも茂原を走り込んでいる坂西裕さんに「安全かつ効率の良いオーバーテイク」を解説していただきましょう。それではばんざいさん、よろしくお願いします!
安全かつ効率の良いオーバーテイク。
ろんぐらいだぁすとーりーず!オフィシャルチームインストラクターの坂西です。今回は、キャラクターエンデューロ・サイクルレースの部の舞台となる茂原ツインサーキットで重要な、「安全かつ効率の良いオーバーテイク」をお話ししたいと思います。
安全走行のための基本3点セット。
キャラエンの舞台、茂原ツインサーキット東コースはコーナーが多く、初心者からプロまで混走するエンデューロでは、大幅にペースの異なる参加者同士、抜いたり抜かれたりが常に続きます。
難しく考えず、コーナー・直線を問わず、下記3点を守って貰えば問題ありません。
「キープレフト」
「抜く際は右から」
「抜くとき、左に戻るとき共に後方に注意し、急激な動きを避ける」
一番安全なのは直線で抜く事。
……当たり前だと思いますよね?
本来そうあるべきです。
しかし、実際ロードレースやクリテリウムなどで、道幅が広く直線が長いコースの方が重大なダメージに繋がる集団落車が多く、危険です。
何故か?
まっすぐ走らない、好き勝手に蛇行する選手が多いからです。
スピードが乗っており、空気抵抗を減らす為にみな車間を詰めているからなおさらです。
接近状況のケーススタディ。
キャラエンでは基本的にキープレフトなので、ゆっくり走りたい・足を止めて休みたい人は左端に。
それを追い越したい人はその右側から。
更に速い人はそのまた右から。
そのように整然と走っていただければ、抜く側・抜かれる側共にストレス無く安全であるはずです。
しかし実際には下の画像のような状況で、速い順に1>2>3>4>5>6となっているケースが往々にしてあります(画像はあくまでも参考概念であり、実例ではありません)。

上記の速度順だった場合、「5」やそのはるか前方の集団から離れたかったのかもしれませんが、「4」は右寄り過ぎ。
「1」は「4」が右寄りだったために左から抜きに掛かったのかもしれませんが、追い越しは基本的に右側からを徹底して下さい。特にこの場合は後続が居ないので、あらかじめ後方確認して更に右から行けるはずです。
背後に迫ってからではなく、早い段階で(まだ後方に離れているところから)「右抜きます」と声を掛けましょう。
「2」は「5」を抜きに掛かっていますが、その前方で更に遅い「6」を抜く為に「5」が右に寄ってくる可能性がある事に注意。
「5」は右による際に後方確認(目視すること自体、後方に対して「あ、こっちに来るかも」というアピールになります)しつつ、急激な動きは避けるよう、「2」は「抜きます」等の声を掛けて存在をアピールしましょう。
「6」は声を掛けられてから避けるのではなく、最初からコース左端を走りましょう。
「3」は「6」を追い抜きを終えたら、左側後方を確認しつつ、穏やかに左へ戻り、コース右側のスペースを空けましょう。
抜いた直後に横に動き、後輪で相手の前輪に接触して落車させる事例が非常に多いので要注意。
そしてコーナーが連続するので、うまく抜けずに渋滞したり、強引に抜いて危ない場面が見受けられます。
その際、抜かれる側に危険を与えず、また自らも無駄に力を使わないスマートな抜き方が上級者の腕の見せ所。
また、抜かれる側は安全に抜いて貰うスペースを確保することで、自らの身を守り、快適なマイペース走行につなげましょう。
■追い抜きのケーススタディ。
例えば下画像、黄色の選手が青の集団を追い越そうとした場合。

キャラエンの周回方向(時計方向)ですとコーナー名はさかのぼる形になります。
抜けない場所で遅い集団の背後に張り付いてしまうのは下策です。
遅いペースに合わせて減速せざるを得ず、いざ抜きに掛かった際に並走時間が長く、また加速するのに無駄なエネルギーを使う事になります。
5コーナーでアウト(右側)から被せて抜きに掛かった場合、曲がりきれない先行車がアウトにはらんでくる可能性があり、それを見越して避けるだけの余裕が必要です。
そうしたリスクを冒すより、手前であえて車間を空け、抜きやすい場所でスピードを保ったまま追いつくように調整すると、無駄な加減速をせずスマートに抜けます。
この場合でいうと、4コーナー入口から上りが始まり、また右コーナーなので先行車がキープレフトしていればイン側が空きます。

上画像の赤ラインを通ることが出来れば、減速せず直線的に抜くことが可能です。
あらかじめ後方から声を掛け、先行車が右に寄って来る事を防げば、ラインが交錯して接触する危険も避けられます。
よく見られる失敗が黄色ラインで進入してきて、曲がりきれず右コーナー出口で左側にはらんだ挙げ句、左側から先行車を強引に抜いていくケース。
また、抜かれる側もキープレフトを徹底していないと後続の前を塞いでしまいやすい場所です。
4コーナー先の上りで失速した先行車を抜く場合も、更に速い後続が後方から来ていないか、よく確かめましょう。
……繰り返します。

初心者が覚えておきたいこと。
特に初心者は後方を目視する余裕がなく、無理に振り向いてふらつくと危険なので、自分の安全を確保しつつ人の妨げにもならない為に、右コーナーも含め常にコース左側に寄って走行する事を心掛けて下さい。
そして「抜くときに後方から声を掛けろ」というのは、不慣れな人ほど後方から速い車両が来ている事に気付き難い為、声で存在を知らせましょう、という事です。
左に寄っていても「右を空けて!」と声を掛けられる事もあると思いますが、これは「これから追い抜くから右に寄ってくると危ないですよ」という予告です。
オフィシャル車両のクラクションも同様の意味です。
決して威嚇しているわけでは無く、初心者ほど気付かないケースが多い為より遠くから大きな声や音で知らせている事を御理解の上、走行中は目だけではなく耳からの情報も周囲の状況把握に活用して下さい。
抜く側が心しておきたいこと。
抜こうとして右に寄ろうとする場合も、後方からさらに速い車両が接近している可能性を常に意識し、後方確認を怠らないようにして下さい。
後ろも見ずにコース幅目一杯使ってアウトインアウトのラインを通り、結果後続の邪魔をしているのは非常に格好悪いものです。
また、声も掛けずに抜きに掛かっておいて「邪魔された、寄せられた」というのも、自らの至らなさを他者に転嫁する無様な行いです。
先行車のライン変化を予測して、車間や抜くポイントを調整してこそ上級者です。
なにせ元オリンピック選手や現役トップアスリートなどの目が至るところに(コース上で一緒に走るのも含め)ありますので、下手にイキり倒していると逆に大恥をかくことになります。
■自由なライン取りができても・・・
余談ですが、タイムトライアル等で自分の好きなラインを自由に取れる際も、何が何でもアウトインアウトで旋回半径を大きく取れば速いかというと、必ずしもそうではありません。
茂原で言うと8コーナーは2つのRが連続する複合コーナーですが、進入はセンターから入り、1つ目(R11)のインには付かず、2つ目(R9)のインをかすめてアウト側の縁石に向かって立ち上がります。
参考: http://www.mobara-tc.com/_userdata/east_map.pdf
モータースポーツにも学ぼう。
ライン取りやスマートな抜き方、抜かせ方(譲り方)は、モータースポーツが参考になります。
「レーシングミク」でおなじみグッドスマイルレーシングを応援しつつ、勉強しましょう。
参考: https://www.goodsmileracing.com/
ちなみにグッドスマイルレーシングの片岡龍也選手は茂原ツインサーキット東コースでドライビングレッスン(四輪)を行っていらっしゃいます。
参考: http://www.mobara-tc.com/kataoka_d.school.html
※わたくし坂西はこの二年ほど常連です。
次回のお題は「フォークコラム長、プレッシャープラグの重要性」
今回は、コース上でのオーバーテイクについてお話ししました。次回は走行シーンからちょっと離れて、「フォークコラム長、プレッシャープラグの重要性」の予定です。ろんぐらいだぁすとーりーず!オフィシャルチームでチーム参加者のバイクチェックをする際に気になった点をフィードバックします。

坂西裕さん記事一覧
●【スペシャル記事】by 坂西裕(M.マキノサイクルファクトリー)第1回「自己紹介とキャラエンの心」
●【スペシャル記事】by 坂西裕(M.マキノサイクルファクトリー)第2回「サーキット走行の基本」
●【スペシャル記事】by 坂西裕(M.マキノサイクルファクトリー)第3回「安全かつ効率の良いオーバーテイク」
■文:坂西裕(M.マキノサイクルファクトリー)
■有限会社 エム、マキノサイクルファクトリー
http://www.makino-cf.com
■第3回キャラクターエンデューロ2020
http://charaen.jp